最高裁判所第二小法廷 昭和57年(オ)1088号 判決 1983年5月27日
上告人
朝野建設株式会社破産管財人
田平藤一
右訴訟代理人
井上順夫
被上告人
株式会社 田原建材店
右代表者
田原豊弘
主文
原判決を破棄する。
本件を福岡高等裁判所宮崎支部に差し戻す。
理由
上告人の上告理由について
記録によれば、原審は、控訴人であつた朝野建設株式会社が破産宣告を受け訴訟手続が中断中であつたにもかかわらず、同会社を当事者として本件の審理及び判決をしたものであることが明らかである。右事実によれば、同会社は法律上訴訟行為をすることができない状態において審理及び判決を受けたものであつて、この場合は当事者が代理人によつて適法に代理されなかつた場合と同視することができるから、民訴法三九五条一項四号の規定の趣旨に則り、原判決は破棄を免れないものといわざるをえない。論旨は理由があるから、原判決を破棄し、本件を原審に差し戻すこととする。
よつて、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(鹽野宜慶 木下忠良 宮﨑梧一 大橋進 牧圭次)
上告人の上告理由
一、朝野建設株式会社(以下破産会社と称す)は、昭和五六年五月二一日訴外有限会社九州リシン商会外二名から破産の申立を受け、同年九月一日午前一〇時鹿児島地方裁判所名瀬支部において破産の宣告を受け、同日上告人は破産管財人に選任され、
(1) 債権届出期間 昭和五六年一一月二日まで
(2) 債権者集会の期日 昭和五六年九月一七日午後一時三〇分
(3) 債権調査の期日 昭和五六年一一月一八日午後一時三〇分
と定められたが、右債権調査期日は続行となりその後、同年一一月一八日、同五七年一月一八日とそれぞれ債権調査の期日が指定されたがいずれも続行となりいまだ債権調査の一般期日を終了していない状況にある。
二、破産会社は昭和五六年五月二六日、第一審裁判所が言渡した判決を不服として控訴を提起したところ、二審裁判所は第一回口頭弁論期日を同年九月七日と指定し、破産会社は同年八月四日右期日呼出状を受け取つた。
三、第二審裁判所は、破産会社の右破産決定により、破産会社と被上告人間の訴訟手続は中断したにもかかわらず破産法による受継手続を経由することなく、昭和五六年九月七日審理を続行し、右同日弁論を終結し、同年九月三〇日判決を言渡した。
破産管財人は、右判決言渡後に控訴の事実を知つたものである。
右判決言渡は、訴訟手続中断中にもかかわらずなされたものであるから、民事訴訟法第三九四条乃至第三九五条第一項第四号に該当するので上告を提起する。